提供:NPOラーニングスキルマイスター協会
同じ会社に定年まで勤める「終身雇用」はだんだんと少なくなり、
- 副業をする
- 望む企業へ転職する
- 独立してやりたい仕事をする
など、働き方も変わってきていますね。
自分のため、仕事のため、就職のため…いろいろな機会に「学ぶ人」は増えています。
平均寿命が延び「人生100年時代」と言われるようになりました。
定年後にスキルを習得し、後半の人生で新たなことを始める人も多くいます。
ラーニングスキルマイスター協会では、これからの働き方を左右する要素として5つのキーワードを挙げています。
その5つを、ここで解説します。
<目次>
- ライフ・シフト
- 副業
- リカレント教育
- リスキリング
- ラーニングスキル
- まとめ
1.ライフシフト
ライフシフト(Life Shift)とは、ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授とアンドリュー・スコット教授が
「人生100年時代をどう組み立てていくか」
のヒントとなる考えを提唱したもの。
ライフシフトは日本語に訳され、マンガ化もされています。
この本の中で
- 2007年生まれの子供の半数が、日本では107歳まで生きうること
- 平均寿命世界1位の国をグラフ化すると、寿命が10年ごとに平均2~3年ペースで上昇していること
が言及されています。
いま50歳未満の日本人は100年以上生きる時代を過ごす可能性がとても高いということです。
さらに「いまの80歳の人は、20年前の80歳よりも健康」とも述べられています。
人の寿命は年々延びていますが、現在の日本ではいまだに「教育→仕事→引退」という人生、すなわち
20歳前後まで教育を受け(教育)、65歳までしっかり働けば(仕事)、そのあとは引退し余生を楽しく過ごせる(引退)
といった人生をなんとなく想定している人が多いようです。
しかし人生100年時代では、単純な「教育→仕事→引退」ではやっていけなくなるかもしれません。
「ライフシフト」をして、従来の生き方のモデルを変えなければいけないのです。
具体的には従来の「教育→仕事→引退」という3つのステージから、「マルチステージ」への移行をすることです。
マルチステージとは「多様な人生」を指します。
2つ3つのキャリアを持ち、生涯を通じて再創造を繰り返すことで、人生の選択肢を広げて生き抜くすべなのです。
ステージを変えるごとに新たな能力を身に付け、視野や人との繋がりも広がり成長していきます。
マルチステージの人生を送るため、自分が心底楽しめてやりがいや高揚感を持てる、そんな新しいステージに移行するためには、自分への投資が必要になります。
ただやみくもに何かすればいいのではなく、「自分らしく生きるとはどういうことか」をイメージして行動するのです。
与えられた仕事をこなすだけの受け身の人生ではなく、意識的に選択していく時代となりました。
そのためにも、自分に投資してスキルアップを図っていく必要があるのです。
2.副業
日本の企業社会ではこれまで、副業禁止の会社がほとんどでした。
しかし政府が副業を推奨しはじめたことで今後、副業を認める会社は増えると考えられます。
副業を認める会社が少なかったのには以下の理由があります。
- 本業に支障がでる可能性があるため
- 競合他社で副業することによる情報流出を防ぐため
余談ですが、前述したような「合理的な」理由づけをもって副業禁止としている会社もありますが、そのいっぽうで、
とくに理由もないけれど、なんとなく副業禁止としている会社
が、少なからず存在しています。
厚生労働省が公開している「モデル就業規則」の2016年3月版を見ると、その中に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言があります。
いいかえると、副業禁止がデフォルトになっています。
会社によっては就業規則を策定するさいに、この「モデル就業規則」をたたき台として使っています。
すると、わざわざ修正しないかぎり、できあがった自社の就業規則も自動的に副業禁止になりますね。
つまり、副業を認めるか認めないかの議論をとくに行わないまま、なんとなく「副業禁止」になってしまっている会社が(かなりたくさん)存在しているのです。
副業を解禁すると、本業への支障、情報漏えいリスクなどが、企業側としては気になるところです。
にもかかわらず企業が副業を解禁するメリットは、どこにあるのでしょうか。
企業側のメリットとしては
- 副業や兼業で新たなイノベーションが生まれるかもしれない
- 副業や兼業は社員のスキルアップになり、ひいては生産性向上につながるかもしれない
が考えられます。
かたや社員の側からすると
- 副業や兼業が第2の人生の準備になるかもしれない
というメリットが考えられるでしょう。
副業はたしかに収入アップの手段です。
ですがそれだけでなく、知識を深め、将来のためのスキルを磨くチャンスでもあると捉えれば、その意義は高まります。
これからは、ますます「副業と学び」の関係は強くなると考えます。
「学び」は副業をやるためにも必要になるのです。
3.リカレント教育
政府が進めている「リカレント教育」。
リカレント教育とは、義務教育または基礎教育の修了後、生涯にわたって教育と他の諸活動(労働、余暇など)を交互に行なう教育システムのことをいいます。
社会人になってからも、学校などの教育機関に戻り、学習し、また社会へ出ていくということを生涯続けることができる教育システムを指します。
「リカレント教育」はスウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンの提唱した概念で、1970年に経済協力開発機構(OECD)の教育政策会議で取り上げられ、研究が進められています。
- スウェーデンやフランスの有給教育制度
- アメリカ合衆国のコミュニティ・スクール
- 日本の夜間制社会人大学院、放送大学
などがその例です。
リカレント(recurrent)には「繰り返し」や「循環」といった意味があり、回帰教育、循環教育と訳されることもあります。
「学び直し」と表現されることもあります。
日本でも、
- 大学の社会人入学制度や科目履修生制度が設置される
- リカレント教育を促進するための専門職大学院やサテライトキャンパスなどが開講される
といった動きはあります。
ところが、OECDが2012年に実施した「国際成人力調査」での、30歳以上の成人の通学率をみると、日本は参加24カ国中、最も低く、その数字は1.6パーセントしかありません。
これはフィンランドの8.27パーセント(24カ国中、最も高い)と比べると、5分の1。
リカレント教育が遅れている日本の現状がわかります。
また、文部科学省が2015年4月に公開した「社会人の学び直しに関する現状等」の資料によれば、
社会人の89パーセントの人が、再教育を「受けたい」又は「興味がある」と回答しているにもかかわらず、実際には「勤務時間が長くて十分な時間がない」「費用が高すぎる」「職場の理解を得られない」などの理由でリカレント教育を受けられていない
という現実も見えます。
今後、急速な少子化高齢化により、労働力人口の減少が懸念される日本。
同時に健康寿命が延び、100歳まで生きることが普通になる「人生100年時代」がやってくると言われています。
こうした背景のもと、日本政府はリカレント教育を推し進めることを国策としています。
2017年9月より首相官邸において「人生100年時代構想会議」が開催されており、すべての人に開かれた教育機会を確保し、何歳になっても学び直しができるリカレント教育について議論されています。
なお、類似の言葉に「リスキリング」があります。
「リスキリング」については次の章で解説しますが、「リカレント教育」と「リスキリング」の違いについては、脚注を参照してください(※)。
4.リスキリング
リスキリング(Reskilling):「新たに仕事に必要なスキルを身につけること」
社会人の転職やキャリアアップが話題になる場面で、よく使われる言葉です。
本来のリスキリングは分野・業界・業種を問わない言葉ですが、実際にはITの分野でよく使われる傾向にあります。
特に最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連したキーワードとして注目されています。
デジタル化・自動化が進むと、これまで人間が行っていた仕事が、その内容によってはをAIに置き換えることが可能となります。
これにより多くの職業が将来なくなるのではないか、と言われています。
AIが代替できるような職業はなくなりますが、そのいっぽうで、デジタル化・自動化に対応できる人材の必要性は上がります。
そこでリスキリングにより、新しく人材が必要となる分野・業界・業種に人材をシフトさせようと、世界各国の企業がすでに取り組みを始めています。
リスキリングとは、これまで慣れ親しんできた仕事の知識やスキルを捨て、新しい知識へのアップデートをすることでもあります。
とくにノウハウの陳腐化が早いITの領域では、つねにリスキリングが必要となります。
ベテランにとっては苦しいプロセスかもしれませんが、個人にとっても社会にとっても乗り越えなければならないステップです。
なお、
- 前章で解説した「リカレント教育」
- 本章で解説した「リスキリング」
両者の違いについては、脚注を参照してください(※)。
5.ラーニングスキル
これからの人々はこれまでの人々よりはるかに多くの時間を「学び」に使うようになります。
義務教育や受験勉強だけではなくなります。
パソコンやスマートフォンの普及により、学びやすい環境も整いつつあります。
しかし「なにから学びを始めたらいいのか」「なにが自分に向いているのか」を迷う人は少なくありません。
「学びたいことはいろいろあるけれど、限られた時間のなかで、どうやって学んでいけばいいのだろう?」と悩む人も数多くいます。
そこで役に立つのが「ラーニングスキル」です。
「ラーニング」は日本語で「学ぶ」。
「スキル」は日本語で「技術」。
したがって「ラーニングスキル」は、「学ぶ技術」を意味します。
どうせ学び続けるなら、自分に合ったやりかたで、効率よく学びたいですね。
そのためには「学ぶ技術」そのものも、学んでおくのが望ましいとされます。
ラーニングスキルマイスター協会は、この「学ぶ技術」を多くの方に知ってもらい、普及させることを活動の一環としています。
当協会では「学ぶ技術」を以下の3要素に分けて考えることとしています。
自己理解
自分の性格を客観的に分析し、どのような部分が強みであり、弱みであるかを理解すること。
それにより、どのような学びが合っているのか、何が向いているのかを考えられるようになります。
記憶法
世の中には多くの記憶法が存在します。
それらの共通点や相違点を知ることで、自分に合った記憶法を選んだり工夫したりすることができます。
勉強法
勉強法も世の中に多く存在します。
それらの共通点や相違点を知ることで、自分に合った勉強法を選んだり工夫したりすることができます。
6.まとめ
人生100年時代。
「マルチステージ」への「ライフシフト」が起きると、これからの人々はこれまでの人々よりはるかに多くの時間を「学び」に使うようになります。
「学び」は義務教育や受験勉強だけではなくなり、好む好まざるにかかわらず、延々と続くものになります。
学びやすい環境も整いつつあり、「学びは人生そのもの」といっても過言ではない時代が到来します。
それが「リカレント教育」「リスキリング」という言葉に現れています。
日本政府も「リカレント教育」「リスキリング」を国策として推し進めようとしています。
しかし「ライフシフトだ!」「学びは人生そのものだ!」「リカレント教育の時代が来た!」「リスキリングをしていこう!」と叫ばれても、多くの人は戸惑います。
なぜなら「何を学ぶか」「どうやって学ぶか」の視点が欠けているからです。
そこでラーニングスキルマイスター協会では、「何を学ぶか」「どうやって学ぶか」、すなわち「学ぶ技術」にフォーカスした活動をはじめています。
自己理解をふまえたうえでの記憶法や勉強法、さらに資格の活用法など、「学ぶ技術」を知っていると知っていないとでは、自己啓発、今後の人生にも大きく差がつくでしょう。
(※)「リカレント教育」と「リスキリング」の違い
リカレント教育
- 「学ぶ」と「働く」を切りわけて考える。
- 「(職場で)働く→(仕事を離れて)学ぶ→(新たに職について)働く」というサイクルを回すイメージ。
- 個人の学びであり、何を学んでもよい。
リスキリング
- 「学ぶ」「働く」は同時進行。
- 仕事に必要な新しいスキルを学ぶ。
- 企業側が社員に学ばせたいことを学ぶイメージがある。